グループ一九八四年

かつての時代の農民、漁民あるいは職人たちは完全に自分自身の生活体験を通じてテストした知識の枠内で図式を作り、それでもって人生や世界を測っていた。かれらの持っている知識や情報は確かに限定されたものであったかも知れないが、しかし少なくともかれらの生きている生活空間に関しては現代人の到底及びえない賢明さと生活の知恵を持っていた。それに引きかえ、現代人は自分の直接経験をしっかりと見つめる時間を失い、自分の頭でものを考えることを停止したまま、皮相な知識の請け売りで、アラブがどうした、韓国がどうだと世界中の出来事に偉そうに口をはさんでいらいらと生きているのである。こうした思考力、判断力の衰弱がもたらした品質の悪い情報は、我々の情報環境に満ちあふれ、恐るべき情報汚染を惹き起してくる。情報汚染の濃厚凝縮を受けた人間はやがて幼稚な狂信者となり、暗殺をしたり、ハイジャックをしたりする犯罪者と化していく。われわれはこうした現代文明にひそむ恐るべき幼稚化と野蛮化のメカニズムを直視し、これを克服するための新しい努力を全力を挙げて開始せねばならないと思う。